個人再生のご相談をお考えの方へ
借金の総額が減ることによって返済が可能になるような場合には、個人再生という手続きをご検討ください。
個人再生をおこなうことにより、負債を圧縮して長期間で返済できるようになる可能性があります。
個人再生が認められるかどうか、それによりどの程度金額を圧縮することができるかということは、弁護士にご相談ください。
当法人には個人再生を得意としている弁護士が所属していますので、しっかりと見通しなどをご説明するとともに、手続きがスムーズに進むよう対応させていただきます。
個人再生に関して疑問などがある場合にも、お気軽にご質問ください。
個人再生を依頼する弁護士の選び方
1 個人再生では弁護士選びが大切
本稿では、個人再生を依頼する専門家の選び方についてご説明しますが、まず、個人再生における弁護士選びの大切さを知っていただく例として、本稿の執筆者が相談を受けた問題あるケースをいくつか取り上げます。
① 住宅資金特別条項を利用する個人再生を弁護士に依頼したが、当該弁護士は4年以上申立てをしていなかったケース
② ①と同じく住宅資金特別条項を利用する個人再生を弁護士に依頼し、滞納していた公租公課は分割で納付していたところ、当該弁護士から公租公課の滞納を解消しないと申し立てはできないと言われ、弁護士への委任から3年ほど経過していたケース
③ 再生債権者のうち1社が債権総額の過半数を占めていたため、小規模個人再生では当該債権者から再生計画案について異議が提出される可能性があり、また給与所得者等再生を選択した場合の最低弁済額でも返済できる見込みがあったにも関わらず小規模個人再生を選択して申し立てたが、案の定異議が提出されて手続きが廃止になったケース
①は典型的な事件放置のケースで、個人再生に限らず自己破産や一般の民事事件でも起こりうることです。
②は、公租公課について滞納があり、かつ分納の取り決めもしていない場合は、個人再生の申立ては通常困難ですが、分納の取り決めをして分納している場合は、基本的に申立てに支障はありません。
③は、弁護士に手続きを委任した時点で過半数の債権額を有する再生債権者が再生債務者の不動産に仮差押えをしていたケースであり(住宅ローンを担保する抵当権が設定されていたが、自宅を売却し住宅ローンを返済しても余剰が出る見込みであった)、そうであれば、慎重を期して最初から給与所得者等再生を選択すべきでした。
2 個人再生を依頼する専門家の選び方
このように、個人再生を行う際には、適切に弁護士を選ばないと、個人再生がうまく進められないおそれがあります。
ここでは、法律相談を中心にして個人再生を依頼する専門家の選び方についてご説明します。
⑴ 法律相談前の指示の有無
個人再生は返済を前提とした手続きとなりますので、家計の収支状況を前提に個人再生を行って返済できるかどうかを検討しなければなりません。
また、住宅ローン特則を利用する場合は、その利用の可否について判断しなければなりません。
これらを検討、判断するためには一定の資料が必要となりますので、相談をする弁護士が個人再生手続きに慣れているのであれば、これらの資料の準備について指示があるはずです。
⑵ 法律相談での対応
法律相談を受ける前に、可能な限りネット等を閲覧して個人再生についての情報を得ておきましょう。
そして、法律相談で、疑問点を遠慮なく弁護士に聞いてみましょう。
弁護士による回答がスムーズで、かつわかりやすいものであれば、その弁護士は個人再生手続きに慣れていると言えるでしょう。
なお、弁護士がほとんど、または全く法律相談の対応を行わず、事務が対応するような場合は、その弁護士への依頼は極めて慎重に検討すべきです。
個人再生手続きは、一生に一度行うか否かという手続きですので、上記の点も参考に、慎重に依頼する弁護士を選んでいただければと思います。
個人再生をする場合の流れ
1 弁護士との初回相談
まずは、弁護士と相談して、今後の方針、どのような流れで手続きを進めていくか、具体的にいくらを返済してくことになるのかの見通し、費用の支払スケジュールなどを相談します。
初回相談の内容を踏まえて、弁護士に依頼して手続きを進めていくかを検討します。
2 契約、受任通知の送付
相談をして弁護士に依頼することを決めたら、契約書などの書類を作成します。
初回相談で契約する場合もあれば、契約までに何回か打ち合わせをすることもあります。
契約後、受任通知といって、弁護士が代理人となったことを通知する書面を、借入先全てに送ります。
受任通知を送ると、原則として各社からの督促は止まります。
3 資料収集、家計簿の作成
契約後は、申立書の準備を進めます。
個人再生の申立てには、通帳、課税証明書、給与明細、雇用契約書、車検証、自宅や車の査定書などを添付する必要があります。
また、家計簿を提出する必要もあります。
資料集めや家計簿の作成は、弁護士と相談しながら進めていきますので、ご安心ください。
4 申立書の作成
資料収集等が終わったら、弁護士の方で、申立書を作成していきます。
5 個人再生の申立
資料集めが終わり、申立書が完成したら、住所地を管轄する地方裁判所に申立書を提出します。
6 申立書の補正
裁判所が申立書の内容を確認して、誤りや不明点があると、裁判所から問い合わせがあります。
裁判所の問い合わせに対して、申立書の内容を修正したり、意見書を提出したり、必要に応じて資料をつけて提出したりします。
7 個人再生手続きの開始(開始決定)
申立の内容に不備がないと判断されると、裁判所が開始決定というものを出し、個人再生手続きが開始します。
8 債権の届け出・異議申述
個人再生手続が開始すると、債権者に借金の額を確定させます。
債権者から届け出があり、それに対し異議があれば異議を申し立て、借金の額が決まります。
9 再生計画案の作成
確定した借金の金額を基に、借金をいくらに減額し、何年かけて支払っていくかの案(再生計画案)を作成し、裁判所に提出します。
借金がいくらに減額できるかは法律で決まっており、法律が決めた最低弁済額か、所有している財産の総額の、どちらか大きい方の金額にまで減額できます。
また、返済期間は原則3年ですが、事情により5年まで延ばせることもあります。
10 再生計画案の決議
再生計画案を裁判所に提出すると、裁判所の審査後、債権者からの意見聴取が行われます。
小規模個人再生手続においては、債権者から一定の同意が必要となります。
給与所得者等再生手続においては、意見聴取のみで、同意までは不要です。
11 再生計画の認可・不認可
再生計画案が認められると、裁判所から再生計画認可の決定が出ます。
認可決定が出ると、個人再生手続は終了となります。
12 手続き完了・返済開始
手続き完了後は、裁判所で認可された再生計画のとおり、返済を行っていくこととなります。
返済を怠ると、再生計画の認可決定が取り消されてしまうため、注意が必要です。
個人再生をするのに必要な費用
1 個人再生にかかる費用
個人再生は、裁判所を通して行う手続きであり、複雑な資料の準備や裁判所との折衝があるため、基本的に弁護士に依頼することになります。
そうすると、個人再生にあたっては依頼する弁護士への弁護士費用や実費、裁判所に納める費用が必要となります。
2 弁護士費用
弁護士費用は、各事務所・弁護士によって変わってきます。
例えば、財産状況が複雑であったり、借入先が多岐にわたり、債務状況が複雑であったりすると費用が高額になる傾向にあります。
3 裁判所に支払う費用、実費
裁判所に払う費用としては、収入印紙代、官報掲載費用、郵便切手代、個人再生委員への報酬等があります。
収入印紙代、官報掲載費用、郵便切手代は合計しても数万円程度ですが、個人再生委員への報酬は15万円~20万円程度となります。
4 費用の準備と支払い方法
こうした費用を、一括で準備することは難しいかもしれません。
当法人にご依頼いただきますと、この費用は必ずしも一括で準備する必要はなく、弁護士へ依頼して各債権者への返済が止まったあとに分割で支払うことができる場合もあります。
そのため、費用面がネックとなって手続きを断念してしまう前に、当法人に一度ご相談ください。
5 弁護士法人心へ個人再生について相談
当法人は、個人再生をはじめとした債務整理の相談を原則無料で行っています。
また、弁護士がそれぞれ担当分野をもって業務を行っておりますので、個人再生の相談であれば個人再生に長けた弁護士が対応させていただきます。
個人再生を行った場合の費用や、手続きを行った場合に返済額がどの程度圧縮されるのか等、まず話だけでも聞いてみたいという方は、当法人までお気軽にお問い合わせいただければと思います。
個人再生の手続きの期間
1 申立て準備
個人再生は、裁判所を利用した法的整理手続きの1つです。
個人再生手続の申立てを行うにあたっては、必要書類の準備が求められます。
財産に関する資料として、一定期間の通帳の履歴、保険証券、給与明細、源泉徴収票、確定申告書、車検証等を準備する必要があります。
例えば通帳の履歴について、横浜地裁では、申立て前1年分の提出を求められています。
このあたりは、個々の財産状況によって変わってきます。
例えば、不動産をお持ちの方の場合には、不動産の時価を査定した資料や登記簿謄本等の提出も必要となります。
また、現在の収入や、家計状況等も報告事項となっていますので、準備には比較的手間や時間を要することになるかと思います。
同時並行して、弁護士費用も準備していただくことが多いです。
期間は、早い方で数か月程度、人によっては半年以上かかることもあります。
2 申立て後
裁判所に申立てを行うと、裁判所の方で申請書類の確認が行われます。
その後、裁判所の方から追加の説明や証拠提出を求められることがあります。
事案の内容ごとに異なりますが、資料の補充等で1か月程度はかかることが多いと思います。
裁判所からの指示等に対応した後、手続開始決定というものが出されます。
内容によっては、開始決定の前に、個人再生委員が選任され、手続に関与することになる場合もあります。
3 開始決定後
開始決定後は、債権額の確定や返済計画案の提出などを行いますが、ご自身で行っていただくものの中で重要なのは、「履行テスト」等と呼ばれる、毎月の返済のテストです。
個人再生の場合は、手続き終了後に各債権者に対する返済が予定されています。
この返済を適切に行えるかどうかの判断をするため、毎月返済予定額を積み立てていくことになります。
案件次第ですが、最低でも数か月間は積み立てを要することになります。
4 認可決定
返済計画案などに所定の数以上の異議が出されなければ、裁判所が返済計画の認可を決定します。
決定は約1か月で確定し、その後は3年ないし5年の期間で、計画に従って債権者へ返済を行っていきます。
個人再生を行うメリットとデメリット
1 個人再生手続きのメリット・デメリット
個人再生手続きは、債務整理の方法の1つです。
債務整理を行うこと自体のメリット・デメリットのほか、他の方針と比較した場合の個人再生固有のメリット・デメリット等もあります。
2 個人再生のメリット ~返済総額の大幅な減額~
個々のご事情にもよりますが、個人再生は、総支払額を大きく減らすことができる可能性がある手続きです。
例えば、500万円以上1500万円までの債務については、総返済額は1/5に圧縮される可能性があります。
1500万円の債務がある方の場合、300万円まで減るため、1200万円もの支払義務が免除される可能性があるということになります。
減額された債務を、原則3年、最長で5年までの間に返済しますと、残債務(上記の例でいえば1200万円)の返済義務が免除される可能性があります。
3 個人再生のメリット ~マイホームを残せる可能性~
住宅ローンを組まれている方で、住宅ローンの支払いや他の債権者からの借り入れ等で生活が苦しくなっているという方もいらっしゃるかと思います。
多重債務に陥っている場合、真っ先に自己破産が思い浮かぶかもしれません。
自己破産では、基本的に手持ちの財産となるものは現金化し、債権者に分配するため、高額の財産である不動産は、ほとんどの場合現金化せざるを得ないことになります。
これに対し、個人再生の手続きにおいて、一定の条件を満たしている場合には、住宅ローンの支払いを続けてマイホームを維持したまま、それ以外の債務の減額によって生活再建が認められる場合があります。
4 個人再生のメリット ~資格制限回避~
これは、個人再生と自己破産を比較した場合のメリットになります。
自己破産すると、一部の資格について、一時的に資格制限されます。
よく問題とされるのは、保険の募集人や警備員等です。
一時的にせよ資格が制限されることで、現在の仕事ができなくなる可能性があります。
個人再生には資格制限がないため、自己破産をすると資格制限が問題となる場合に、個人再生をすることで生活再建を行うことがあります。
5 個人再生のデメリット ~ブラックリスト~
厳密にはブラックリストというリストはないようですが、個人再生をすると、他の債務整理をする場合と同様、信用情報機関に事故情報が登録されます。
一定期間新たに借り入れができない、ローンが組めない等の不利益が生じる点は、債務整理をする場合のデメリットの典型です。
個人再生をすると返済額はどう変わるか
1 個人再生をした場合の返済額
個人再生は、民事再生法の規定に従い圧縮された額を原則3年、最長5年で計画的に返済を完了することで、すべての債務の返済義務が免除される手続きです。
返済額については、複数の基準に基づいて決定され、最も額が大きい分を返済する必要があります。
2 総債務額を基準にした返済額
総債務額を基準とした返済額を規定しているのは、民事再生法231条2項3号及び4号です。
3号は「前号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が三千万円を超え五千万円以下の場合においては、当該無異議債権及び評価済債権(別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権及び第八十四条第二項各号に掲げる請求権を除く。以下「基準債権」という。)に対する再生計画に基づく弁済の総額(以下「計画弁済総額」という。)が当該無異議債権の額及び評価済債権の額の総額の十分の一を下回っているとき。」と規定されています。
4号は「第二号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が三千万円以下の場合においては、計画弁済総額が基準債権の総額の五分の一又は百万円のいずれか多い額(基準債権の総額が百万円を下回っているときは基準債権の総額、基準債権の総額の五分の一が三百万円を超えるときは三百万円)を下回っているとき」と規定されていますが、一読してすぐには把握できないかと思います。
まとめると、以下のように整理できます。
- ⑴ 総債務額100万円以下の場合は総額のまま
- ⑵ 100万円~500万円までは100万円
- ⑶ 500万円~1500万円までは総債務額の1/5
- ⑷ 1500万円~3000万円までは300万円
- ⑸ 3000万円~5000万円までは総債務額の1/10
なお、総債務額が5000万円を超えてしまうと、個人再生を行うことができません。
3 清算価値保障原則
清算価値保障原則は、ごく簡単に申し上げますと、「手持ちの総財産以上を返済しなければならない」というルールです。
財産と聞くと、まずは現預金が思い浮かぶかと思います。
人によっては株式などの有価証券、ご勤務先の持ち株、仮想通貨等をお持ちの方もいるかと思いますが、それらの時価額が清算価値と評価されます。
自宅不動産や車などをお持ちの方の場合、これも清算価値として評価の対象となります。
また、いずれ受け取ることが予定されている退職金について、退職が見込まれない段階では、その1/8を清算価値として評価するものとされています。
さらに、積み立て型の生命保険に加入されている方の場合、解約返戻金も清算価値として評価されます。
個人事業主の方の場合は、未回収の売掛金債権も清算価値として評価されますのでご注意ください。
小規模個人再生の場合、総債務額を基準にした返済額と清算価値のうち、どちらか高い方以上を返済していくことになります。